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阿津川辰海『蒼海館の殺人』感想-水×クローズドサークルの超大作

 

高校生探偵葛城・助手田所 シリーズ第2弾!

 

これは前作『紅蓮館の殺人』を先に読んでおくべき!

どっぷりのめり込める本格ミステリ


蒼海館の殺人 (講談社タイガ)

 

『蒼海館の殺人』

学校に来なくなった「名探偵」の葛城に会うため、僕はY村の青海館を訪れた。政治家の父と学者の母、弁護士にモデル。
名士ばかりの葛城の家族に明るく歓待され夜を迎えるが、激しい雨が降り続くなか、連続殺人の幕が上がる。
刻々とせまる洪水、増える死体、過去に囚われたままの名探偵、それでも──夜は明ける。
新鋭の最高到達地点はここに、精美にして極上の本格ミステリ

裏表紙より引用


高校生探偵葛城・助手田所 シリーズ2作目

阿津川辰海 あつかわたつみ

講談社

2021年2月16日発行

全631ページ

 

『紅蓮館の殺人』から二ヶ月後の話


高校二年生の葛城輝義は7歳のころから警察も悩ます難事件を解決へと導いてきた名探偵。彼は探偵として確固たる自信があった。
しかし、『紅蓮館の殺人』でその自信が揺らいでしまった。

合宿を抜け出して事件に巻き込まれた『紅蓮館の殺人』の謹慎処分も明けたのに葛城は学校へ登校してこない。
二ヶ月も葛城と会えないことに心配と不安を感じた田所信哉は友人の三谷と共に葛城家を訪ね恐ろしい事件に巻き込まれる。


葛城が悩み、田所も悩む。
うじうじうじうじしやがって!と思わなくもない。事件とはまた別に、二人にとって重要なストーリーなのはわかるのだけども、ちょっと、だいぶ、かなりしつこいと感じてしまった。良く言えば丁寧な心情描写なのだけどね。

田所くんはなんだかヤンデレ彼女のようだし、葛城くんはヤンデレ系田所くんを受け止めきれるかが今後の気になるところ。

初登場の友人、図書委員の三谷は人懐こい性格で良いキャラクターなので今後も登場するのか注目したい。


探偵葛城と助手田所が悩んでるシーンが多いので、前作の『紅蓮館の殺人』を読んでいなければ分からないから部分もあり、何で悩んでいるのかも前作を読んでいた方が感覚的に掴みやすい。


『蒼海館の殺人』を読む前にシリーズ1作目の『紅蓮館の殺人』を読んでおこう!

 


災害×クローズドサークル

 


『紅蓮館の殺人』同様に災害×クローズドサークルと規模の大きいミステリー。

今回『蒼海館の殺人』は水害×クローズドサークル

台風による川の氾濫で逃げ道のない規模の大きいクローズドサークル。徐々に上がってくる水位への不安がミステリーとしていい相乗効果を発揮して恐怖が増す。

 


館が沈めば、探偵も、犯人も、全員死ぬ

濁流押し寄せる館の連続殺人。
雨が止むころ、僕らは生きているのか。

 


災害系ミステリーは【タイムリミット】があるためテンポがいい。600ページ越えの大作ながら勢いがあって読みやすい。
最初は本を手にとってそのボリュームに圧倒されたものの、あっという間に読みきれた。
特に浸水が目前になってからの怒濤の展開はページを捲る手が止まらない。

今後、どんな○○×クローズドサークルがくるか楽しみである。
空気、酸素不足。雪、雪崩。雷。土、土砂崩れ。海、船の沈没……?
高校生という制限があると設定も難しそう
だ。

 

 

600ページ越えでも足りない!

『蒼海館の殺人』は災害×クローズドサークルで川の氾濫による浸水までのタイムリミットが存在する。


イムリミットありの殺人事件は偶然が多い。

作中ではフーダニットに重点が置かれていたようだが、犯人が誰かはなんとなくわかってしまう。
なのでフーダニットより他のこと、とりわけホワイダニットについてが気になった。
しかし動機の弱さやなぜこの犯行方法を選んだのかなどのなぜ?なぜ?なぜ?についてはあまり解決してない。
というか、この部分は流れの勢いで押し通された感じだ。もっと説明が欲しい。

動機が弱すぎだと感じたし、この犯人ならばもっとスマートな犯行が出来たのではないかという期待があった。

犯人の変装上手もさすがに謎すぎる。
この上手すぎる変装設定が出たとき、『金田一少年の事件簿』に登場する高遠遙一のような‘永遠のライバル的な立ち位置の殺人愉快犯’になるかと思ったがその推測はハズレのようだ。
変装上手なのはマンガ的、アニメ的には面白いけどリアリティーさは欠けてしまったように思う。

細かな疑問はあれど力業でなんか納得させられてしまうエネルギッシュな作品。
推理が強引だけどそれを押し通せるパワーがある。

 

 

まとめ

『水害×クローズドサークル』の超大作ミステリー。
600ページ越えながら無駄がほとんどない密度の濃いストーリーで、ページを捲る手がとまらずあっという間に読みきれてしまう。
探偵として決意を新たにした若き探偵葛城と助手田所の今後も楽しみだ。

『蒼海館の殺人』を読む前にシリーズ1作目の『紅蓮館の殺人』を読んでおこう!

 

 

 

以上、阿津川辰海『蒼海館の殺人』たまこの感想でした🐯


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