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小野不由美『営繕かるかや怪異譚 その弐』-短編集で読みやすい!ホラーで暑い夏を乗り切ろう

夏になるとホラー欲が高まる。

ホラーと言えばこの人、小野不由美さん!

という事で手に取った『営繕かるかや怪異譚 その弐』はやっぱり面白かった。 

 

 


『営繕かるかや怪異譚 その弐』


古い家で怪異現象が起こる。


住民が悩む住居に纏わる怪異を営繕屋の尾端は家の修繕で解決に導く──。


『その弐』なのでシリーズものである。

一作目『営繕かるかや怪異譚』が存在するが、どちらも短編集なので『その弐』から読んでも話はわかる。

どちらから読んでも問題はないけれど、面白いから読了後にすぐもう一冊を読みたくなるだろう。

 

シリーズ一作目はこちら↓

 

 

 

小野不由美『営繕かるかや怪異譚 その弐』


1.芙蓉忌


両親と弟が鬼籍に入り、かつて花街だったという古い町並みにある町屋の実家に戻ってきた貴樹。

書斎の柱と壁に深い隙間から芸妓のような三味線を抱えた着物の女性が見えた。

貴樹は覗きはいけないと思いつつもその女性から目が離せなくなっていく──。


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隣家の部屋も除けるような壁の穴なんて見つけたらすぐ塞ぐ。それが普通だ。

なのに隣家の女性を覗き続けてしまうのはやはり……。怖いー怖いよー。


穴を塞がない貴樹にあり得ないと思いつつもいつの間にか貴樹目線で恐怖を感じていた。

 

2.関守


佐代が子供の頃に住んでいた町の神社の脇に背戸があり、夕暮れになると暗くて怖い細道が通りゃんせのようだった。

そこで鬼を見た気がした佐代はずっと『通りゃんせ』が怖かった。

夫の提案で本当に鬼だったのかを確かめに神社へと向かう──。


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子供の頃の不思議な体験は何だったのか?

鬼だったのだろうか?

それを確かめに現地に行き自分なりの答えを見つける。そのお話自体も素敵だが、佐代の過去の体験を信じて行動してくれる佐代の夫が素晴らしい。

 

3.まつとし聞かば


実家の茶舗で実母と息子と暮らす俊宏。

母は二か月前に病気で倒れて意識不明、飼い猫の小春は半月前に交通事故で死んだ。

息子の航には祖母の病状も小春の死も伝えられずに日々が過ぎていた。

ある日、航の布団に小春が来たという。死んだはずの小春ではない。

得たいの知れない「何か」が迫ってきていた──。


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俊宏は父親として息子のためを思って秘密を抱えていたが、子供は大人の想像以上に分かっているものだ。

不器用な父親にやきもきもするが息子と現実に向き合っていく姿は立派だった。


家族のほっこりを感じつつ、怖さもしっかりある。

 


4.魂やどりて


古い民家をリフォームして住むことに憧れていた育。

自分の好きにリフォームして楽しんでいたが、暗闇で何かを責めている人影を夢みるようになる。

現実でも、女が強い語調で何かを責めるような声を聞くようになり──。


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長い年月を経た道具などには魂が宿る。

日本人なら聞いたことがある付喪神

リフォームの「古いものを捨てずに活かす」という考えは良いことだ。しかし魂にはそんなことは関係ないのかもしれない。

ちょっと考えさせられる話。

 

5.水の声


小学校五年生夏休み、幼馴染のリュウちゃんは川で溺れて死んだ。

亡くなった翌年から、背後から淀んだ水の臭いが漂うようになる。臭いはどこかくるのか? 大人になったいまも続く臭い。

臭いが近づいて来ている──。


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これは前作を含めてもちょっと異色作かもしれない。

夜中に読むんじゃなかったと後悔するほど怖かった。

でも夕方に読んだらお風呂入れなくなりそうだ。


ホラーはいつ読むのがいいのだろう。

小説の怖さはいつまでも心に残るからいつ読んでも同じか。

 

6.まさくに


祖母の家で同居することになった。 

両親の言い争いの声から逃れようと押し入れで寝起きしていると、屋根裏部屋を発見する。誰かが作った屋根裏部屋だった。

そこで過ごしていると黒い影のようなものを見てしまう。

それは人影のようで──。

 


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主人公は小学生の子供なのだが1人で留守番している場面が多々でてくる。

このお話の舞台となったお家は広そうなので1人で留守番ってだけで怖そう。

 

1人になりたがり押し入れで屋根裏部屋への道を見つける。

屋根裏部屋の秘密基地は子供の憧れ。

大人でもウキウキしちゃう。


けれどそこは暗い屋根裏なのだ。

怪異現象が起きてもすぐには逃げられない。

 

この話はあれだ。分かってても怖いというやつだった。

お化け屋敷は作り物と分かってても怖いというのに似ている。これは私だけの感覚で伝わらないかもしれない。

 


まとめ

 

怖さもあり、哀しさあり、優しい気持ちになれるお話もある読みやすい短編集。

怖すぎないから読んでみてほしい。

 

以上、小野不由美『営繕かるかや怪異譚 その弐』 たまこ の感想でした🐯

 

コミカライズ版もでてます!