地下建築からの脱出系クローズドサークル。
ただそれだけ聞けば王道設定ともいえるミステリー。
しかし、それだけでけではない!!
面白いので少しでも気になるならネタバレは見ずに絶対に読むべき作品。
2023年本屋大賞ノミネート!
たくさんのミステリーランキングにもランクイン!
「週刊文春ミステリーベスト10」&「MRC大賞2022」堂々ダブル受賞!
本格ミステリ・ベスト10 2023 国内ランキング(原書房) 第2位
このミステリーがすごい! 2023年版 国内編(宝島社) 第4位
ミステリが読みたい! 2023年版 国内篇(早川書房) 第6位
『方舟』
9人のうち、死んでもいいのは、──死ぬべきなのは誰か?
大学時代の友達と従兄と一緒に山奥の地下建築を訪れた柊一は、偶然出会った三人家族とともに地下建築の中で夜を越すことになった。
翌日の明け方、地震が発生し、扉が岩でふさがれた。さらに地盤に異変が起き、水が流入しはじめた。いずれ地下建築は水没する。
そんな矢先に殺人が起こった。
だれか一人を犠牲にすれば脱出できる。生贄には、その犯人がなるべきだ。──犯人以外の全員が、そう思った。
タイムリミットまでおよそ1週間。それまでに、僕らは殺人犯を見つけなければならない。
夕木春央 ゆうきはるお
2022年9月6日発行
全304ページ
地下建築deクローズドサークル
大学時代の友人たちと地下建築へ遊び半分で探検に来た一行は、地震により地下建築内に閉じ込められさらには殺人事件が発生してしまう。
地下建築からの脱出は一週間のタイムリミットつきだが、誰か一人が犠牲になれば他の人たちは助かる道がある。いわゆるトロッコ問題を突きつけられたメンバーはどんな選択をするのか。
極限状態&殺人事件のハラハラドキドキの緊迫感、浮き彫りになる倫理的観点など考えさせられる内容もありページをめくる手がとまらなくなる。
地下建築からの脱出系クローズドサークルはただそれだけ聞けば王道設定ともいえるミステリー。
しかし、それだけでけではない!
ジャンルとしたらクローズドサークルサバイバルパニックホラー! (長い)
面白いので少しでも気になるならネタバレは見ずに絶対に読むべき作品。
極限状態の心理
地下建築に閉じ込められ水没の危機から脱出のタイムリミットは一週間。しかも殺人事件まで起きている。
そもそも殺人事件がなくても地下で一週間も過ごすというのは過酷だ。地下なので日の光はなく体内時計がくるって朝なのか夜なのかもわからなくなる。
そのうえで殺人犯がこの中にいて一週間後には地下建築が水没して全滅するかもしれない。
現実ならば精神錯乱する人間が出てもおかしくないほどの極限状態だが、作中の登場人物たちはみな冷静である。
表面上は冷静のようにみえても“極限状態”ゆえ登場人物たちは矛盾した行動をしていたりもする。
物語のご都合主義を感じる部分も“極限状態だから”という免罪符を上手につかっているなと感じた。
ここら辺の回りくどさは読む人によって合う合わないがありそうだ。
衝撃のラスト
その一文に〇〇する
この謳い文句を表す作品、衝撃のラストと聞いてまず思い浮かべるのは綾辻行人の『十角館の殺人』の人は多いと思う。私もそうだ。
そしていま、『方舟』もランクインした。(※私独自の心の中のランキング)
『方舟』も衝撃のラスト、それも“その一文”にそれまでの倫理感の善悪の葛藤も何もかもがすべてひっくり返される展開と犯人の思想に戦慄を覚えた。
なんとなく表面的だと感じていた極限状態すら伏線だったのなもしれない。そう思うほど人間の本性が出たラストのどんでん返しに脱帽です。
面白かった!
まとめ
地下建築からの脱出系クローズドサークルはただそれだけ聞けば王道設定ともいえるミステリー。
しかしラストのどんでん返しに戦慄する。
面白いので少しでも気になるならネタバレは見ずに絶対に読むべき作品!
以上、夕木春央『方舟』 たまこの感想でした(=^・・^=)