囁きシリーズ第二弾!
シリーズ1作目の『緋色の囁き』とは繋がっていないので、読む順番は気にしなくて大丈夫!
『暗闇の囁き』
森の狭間に建つ白亜の洋館。美しく謎めいた兄弟・実矢と麻堵の周囲で相次ぐ怪奇な"死"。ある者は髪を、ある者は眼球を……奪われた死体の一部分は何を意味する?兄弟がひた隠すもうひとりの少年「あっちゃん」の秘密とは?
恐ろしくも哀しい真相が胸を打つ「囁き」シリーズ第二弾、完全改訂の決定版。
裏表紙より引用
囁きシリーズ2作目〈新装改訂版〉
旧版解説 巽 昌章
新装改訂版解説 阿津川辰海
2021年5月14日発行
(初刊は1989年9月祥伝社ノン・ノベル)
全432ページ
過去からの囁き
大学4年生の悠木拓也は落ち着いて卒論を書くために伯父が所有する別荘へとやってきた。
そこで出会った美しく謎めいた兄弟。小学校高学年くらいの彼らが厳しい躾の環境下にあると知ってから、拓也は10年前にこの別荘に来た時のことを思い出すようになる。その曖昧な過去の記憶が拓也に囁きかけてくる。
子供時代の記憶がいま起きている事件と何か関係あるのか。思い出せそうで思い出せないもどかしさが焦りと緊張感を際立たせる。
『暗闇の囁き』はホラーサスペンス要素が強め。
拓也と事件の関わりが薄いというのもあるが、昔のことが思い出せないという至極普通の現象は“囁き”のインパクトに欠けていたように感じた。
これも面白かったが、ホラーミステリーだった前作『緋色の囁き』の方が個人的には好みだった。
謎めいた美少年兄弟
兄の実矢と一つ年下の弟の麻堵。双子に間違えるほどそっくりなふたりは、北欧系のクォーターで色素の薄い儚げな美少年たちだ。
兄弟の父親は躾に厳しく、テレビやゲームなど一般家庭の子供が当たり前にしている娯楽はほとんど禁止されている。
そんな純真培養な環境で育ったふたりはとにかく素直で幼い印象を受ける。
むかーし、ほのぼの系テレビで “双子の赤ちゃんがふたりだけの独自の言葉でコミュニケーションをとっているホームビデオ” を見たことがある。
実矢と麻堵は年子の兄弟で双子ではないが、ふたりは兄弟だけの独自の世界観がありそれが謎めいた不思議な雰囲気を醸し出している。
この兄弟の存在がちょっとホラー的。得体の知れなさが恐ろしい。
ラストの展開
ラストの展開が早い早い。
そして『緋色の囁き』と同じような含みを持たせた終わり方。
事件がどう収束されたのか気になる!
こうなるとシリーズ第三弾の『黄昏の囁き』も同じ終わり方なのだろうか……。いや、あえて全然違うラストもあるかも。早く読みたい。
解説によると『暗闇の囁き』は同作者の『殺人鬼─覚醒篇』と関連があるらしく、こちらも読んでみようと思う。読みたい本がどんどん増えていく。
まとめ
前作はオカルトホラー要素の怖さ。
『暗闇の囁き』はリアリティーあるサスペンス的な怖さであるのに、どこか現実とはかけ離れた世界であるかのような錯覚に陥るホラー風ミステリー。
大きな展開はないが、世界観に没入し、ふわふわした読後感に包まれる。
以上、綾辻行人『暗闇の囁き』たまこの感想でした🐯