御手洗潔シリーズ第2作品目
壮大なトリックの館ものミステリーは、『館もの』好きなら読んでおきたい一冊!
『斜め屋敷の犯罪』島田荘司
北海道の最北端・宗谷岬に傾いて建つ館―通称「斜め屋敷」。雪降る聖夜にこの奇妙な館でパーティが開かれたが、翌日、密室状態の部屋で招待客の死体が発見された。人々が恐慌を来す中、さらに続く惨劇。御手洗潔は謎をどう解くのか!?
日本ミステリー界を変えた傑作が、大幅加筆の改訂完全版となって登場!裏表紙より引用
御手洗潔シリーズ第2作品目
解説 綾辻行人
改訂完全版 2016年1月15日発行
(1982年に発表)
全477ページ
作者からの『読者への挑戦状』
御手洗潔シリーズは作者から『読者への挑戦状』がお決まりだ。
『私は読者に挑戦する』
材料は完璧に揃っている。事の真相を見抜かれんことを!
これを解答編の直前に書かれるとそのままページは捲れない!
気になる所を読み直し、自分なりに犯人やトリックを考えてからじゃないと解答編は読めない。
いままで一度も作者に勝てたことはないけどね。
いや、犯人はこの人だろうな~と分かったとしてもトリックは見当もつかない。
いつか謎解きに正解したい。
そんな読み方をしているから、読むのに時間がかかってしょうがない。
『館もの』ミステリー
屋敷やお城などが舞台となる殺人事件、いわゆる『館もの』ミステリー。
館ものは外部と連絡が取れない特殊状況下にあったり、いわくつきの館だったりが定番である。内部に犯人がいるのは明らかで疑心暗鬼に陥るまでがセットだ。
『斜め屋敷の犯罪』は斜めに傾いて建設された屋敷で殺人事件が発生する。
北海道の大雪の中で起こった事件は特殊状況下ともいえるが、外界と遮絶されてはいない。警察がすぐ来て泊まり込みで捜査している。
刑事がいてもなお続く殺人。これも明らかに内部犯だけれども、刑事がいるからか館に滞在する人たちに疑心暗鬼のギスギスした空気はない。
推理しながらミステリーを読む者として、人間関係にミスリードされずトリックにだけ集中して考えることが出来て良かった。
こんなに壮大なトリックの『館もの』ミステリーは他にはないと思うので、一度は読んでみてほしい作品だ。
『斜め屋敷の犯罪』の御手洗さん
御手洗と石岡の登場はだいぶ遅かったのだが、御手洗潔の印象が強すぎた。
やっと登場したと思ったら変人ぶりが全開。刑事たちもドン引きである。
小説で読むぶんにはインパクトがあって楽しい人だなと無責任に思えるけれど、実際にかかわるには厄介そうなのが御手洗潔である。石岡がちょっと怒りっぽく見えるのも、ずっと御手洗といたらイライラするだろうから仕方ない。石岡くんのメンタルが心配だ。
前作『占星術殺人事件』の御手洗潔は鬱病の気落ちが酷く、暗く皮肉やな人間にみえた。
『斜め屋敷の犯罪』では変人は変人なのだが、明るくテンション高くしゃいでる様子は子供のようにもみえた。
芸術方面の知識も豊富で推理も探偵っぽく犯人を追い詰めていた。
「頭のいい犯人を警戒させないため道化を演じていたのでは?」と作中で言及され御手洗は否定した。でも、あれは演じていたと思う。
御手洗という人間がまだ掴めない。
まとめ
テンション高めな御手洗潔が探偵らしく犯人を追い詰める。
壮大なトリックがすごすぎる!
一度は読んでみてほしい傑作の『館もの』ミステリー。
以上、島田荘司『斜め屋敷の犯罪』 たまこの感想でした🐯