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高野結史『臨床法医学者・真壁天 秘密基地の首吊り死体』感想-このミス大賞·隠し玉作品!人間嫌いの法医学者が虐待鑑定!

 

第19回『このミステリーがすごい! 』大賞・隠し玉作品!

 

 

 

『臨床法医学者・真壁天 秘密基地の首吊り死体』


法医学者・真壁天は、人間と接するよりも死体を解剖している方が性に合う人間嫌い。
しかし、教授から児童虐待を鑑定する臨床法医の仕事を押し付けられる。不本意ながらも死体相手に鍛えた観察眼を発揮し、様々な親子の闇を暴いていく真壁。
そんなある日、彼に虐待を指摘された親が首吊り死体で発見された。
死体の状況を見た真壁は、小学校時代に目の当たりにした首吊り死体を思い出し──。

裏表紙より引用

 


高野結史

解説・北原尚彦

宝島社

2021年4月21日発行

全283ページ

 

臨床法医学者・真壁天


函館医大法医学教室の助教になって二年目の真壁天。彼は医学部、研修医、博士課程、ひたすら法医への道を最短ルートで走ってきた。
法医学者といえば死体を解剖して死因を調べる人として刑事もの二時間ドラマなどでもお馴染みである。
真壁の興味の対象は死体解剖に絞られていたが、所属している法医学教室の方針で臨床法医の仕事もさせられるようになってしまった。

臨床法医の仕事は児童虐待の鑑定依頼だった。
自身も父親からネグレクト気味な虐待を受けていたためまったく乗り気ではない臨床法医の仕事だったが、真壁は鋭く虐待を見抜く。そのせいで事件に巻き込まれる─。

虐待されているかどうかの鑑定は難しい。
子供は虐待するような親でも一緒にいたいがために親を庇い嘘をつく。
虐待を見逃したら子供は辛い状況のままであるし、虐待を見抜けてもも親はたいした罪にはならない。
真壁も虐待を指摘した相手から逆恨みされ、つねに怯えて過ごしていた。

仕事をしただけなのに理不尽な逆恨みをうけるなら、真壁でなくても引き受けたくなくなるわ。

法医学者としてキャリアを重ねても働き口が少なくて椅子取りゲーム状態なため、些細な評判の悪化でも脱落させられてしまう。せっかく医学部をでたのにリスクがあり稼げない。法医のシビアな世界が垣間見えた。

 

個性的な登場人物たち

 

人と関わるのが苦手な真壁天は言わずもがな、仕事関係者や家族や警察など登場してくる人物がみんな個性的。覚えやすくて良かった。


主人公は虐待被害者だったので、主人公の家族が変な人たちなのはやっぱりなと納得である。
大学関係の人は(院生の青山を覗けば)どことなく暗くて陰険な感じ。
警察はきゃんきゃん煩くて、正義感が強すぎな児童相談所職員や真壁が虐待鑑定した家族たち。

他の登場人物も主人公目線の印象が反映されるからか好きになれないキャラばかり。
主人公を含めここまで好きなキャラがいない話も珍しい。
それなのに続編も出てほしいと思ってしまうのは、常軌を逸した殺人事件と物悲しい余韻を残す終わりかたが面白かったからだろう。

 

まとめ

人間嫌いな法医学者は虐待鑑定の仕事から連続殺人事件に巻き込まれてしまう。
癖の強い登場人物たちにイライラしながら主人公の真壁は成長し、ラストでは涙させられる。
ストーリー的に続編はなさそうだけれども、また真壁天の話を読んでみたい。続編希望な一冊。

 

以上、高野結史『臨床法医学者・真壁天 秘密基地の首吊り死体』たまこの感想でした🐯