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古内一絵『最高のアフタヌーンティーの作り方』感想-美味しいお菓子が人との縁を繋ぐハートウォーミングストーリー

「マカン・マラン」シリーズが大ヒット 

心に染みると評判の著者待望の新作!

 


最高のアフタヌーンティーの作り方

 




『最高のアフタヌーンティーの作り方』

 

老舗・桜山ホテルで、憧れのアフタヌーンティーチームへ異動した涼音。夢にまで見た職場で初めて提出した企画書は、シェフ・パティシエの達也に却下される。

悩む涼音だが、お客様、先輩、そして達也の隠れた努力を垣間見ることで、自分なりの「最高のアフタヌーンティー」企画を練り直し……。

頑張りたい。だからこれは、自分への最高のご褒美!

 

古内一絵

 

中央公論新社

 

2021年4月25日発行

 

全271ページ




アフタヌーンティー

 

東京で初めて本格的なアフタヌーンティーを提供したといわれる桜山ホテルのアフタヌーンティー

日本の四季折々を風景を楽しめる庭園と美味しいお菓子。

客として行くことしか考えたことはなかったが、華やかなアフタヌーンティーを提供されるまでにはスタッフたちの手間暇がかけられているのだ。

今まで知ることがなかったアフタヌーンティーの裏側に、一度はアフタヌーンティーに行ってみたいと憧れの気持ちが湧いてきた。

キラキラした空間というイメージとマナー面の不安でなんとなく気後れしてしまっていたけれど、楽しみ方は人それぞれでいいのだと後押しされた。



アフタヌーンティーは少々お高い。お菓子なんて……と思う人が多いのも事実。

お菓子にお金をかけるという価値観が合う人と行けたら最高なのだが、なかなか難しいかもしれない。

作中でソロアフタヌーンティーを楽しむ女性・西村さんはクリスマスアフタヌーンティー‘あまりクリスマスっぽくないもの’を望んでいた。

この場面で「わかるー!」と共感の嵐が吹きすさんだ。私の中で。

ちょっとはクリスマスの雰囲気を味わいたいけど、クリスマスクリスマスしてると尻込みしちゃう。ただでさえアフタヌーンティーというものは敷居が高いのだ。クリスマスシーズンのソロの敷居の高さは塀なのよ。

控えめでもクリスマス気分味わえる企画だと嬉しいよね。

 

お一人様常連の女性を気にかけてくれてる桜山ホテルのアフタヌーンティーが素敵。





人生悩みだらけ

 

現代における働く女性の悩みの話かと思いきや、働く男性、お菓子好きな男性、正規と非正規、バブル時代の話、戦後の話……等々、どの時代だろうとどんな性別だろうと悩みはあるのだと気付かされた。

 

良かれと思ってのダイバーシティでの雇用も誰にとっての“良い”ものなのか。

どういう対応をされたいかを一律にするのは難しい。かと言って個別に対応変えるというのも現実的には難しい面も必ず出てくる。

 

みんな“普通”であって普通でない部分は持っている。それを忘れずにいきたい。




「いつも自分は、己にとって都合の良い面しか見られない。でも、都合の良い面を見ることと、物事の美しい面を見ることは、きっと違う」 

 

正社員の涼音がサポートの外国人スタッフとの軋轢の対処はお手本のような素晴らしさだった。

主張の強い外国人スタッフに嫌な気持ちになってしまっても仕方ないのに涼音は優しすぎる。

傷ついただろう涼音は祖父をはじめ、周りの人間のおかげで立ち直る。ここのところが特にハートウォーミングストーリーだった。

優しい話で終われて良かったとほっこり反面、綺麗に纏まりすぎているなとも思った。



登場人物たちはみわな悩みを持っており、それがキャラは脇役ではなくそれぞれの人生を歩む人間らしさを出していてよかった。

特に好きな登場人物は見かけは盛りに盛ってフランス人形、中身は競馬好きなおっさんのような瑠璃。

パリピな彼女は明日地球が滅んでも後悔ないよう今を楽しく生きている。悩みがなさそうにみえて誰よりも現実的な思考の持ち主なことにギャップ萌えだ。しっかり者のギャル(?)とか好きなの。




まとめ

 

どんな時代でもどんな立場でも、人は悩みを抱えて生きている。自分のことでいっぱいいっぱいになりがちで、そんな当たり前のことを忘れていた。

桜山ホテルのアフタヌーンティーは人と関わることで傷つくことも癒されることもあるということを思い出させてくれた。

ほっこりハートウォーミングストーリーと美味しいお菓子に大満足な1冊だった。





以上、古内一絵『最高のアフタヌーンティーの作り方』たまこの感想でした🐯