ミス・マープル長編第3作品目、アガサ・クリスティが自薦10作品のひとつに選んだ作品!
ミステリーというよりも恋愛小説のような物語だった。もちろんミステリーとしても面白い。
『動く指』
傷痍軍人のバートンが療養のために妹とその村に居を構えてまもなく、悪意と中傷に満ちた匿名の手紙が住民に無差別に届けられた。陰口、噂話、疑心暗鬼が村全体を覆い、やがて名士の夫人が服毒自殺を遂げた。不気味な匿名の手紙に隠された事件の真相とは?
ミス・マープルが若い二人の探偵指南役を務める。裏表紙より引用
アガサ・クリスティー
訳 高橋豊
解説 久美沙織
(1943年に刊行されたもの)
全399ページ
ミス・マープルの出番は?
傷痍軍人のバートンが療養のため移り住んだ村で謎の中傷手紙と殺人事件が起こってしまう。語り手バートンの目線で物語はどんどん進む。
誰が中傷手紙を送ったのか?
なぜ殺人事件が発生したのか?
面白くていつの間にか残りのページが少なくなっていた。ここにきてやっと「あれ? これミス・マープルシリーズの小説だよね?」という疑問が浮上した。ミス・マープル全然でてきてない!
ミス・マープルが登場してこなくて思わずシリーズを間違えてないか確認してしまった。
ミス・マープルの登場は遅かったけれど、これまで読んだシリーズ三作の中で一番「安楽椅子探偵」らしく感じられた。
登場時間も短いけれどこれは確かにミス・マープルシリーズである。
ロマンス小説としても面白い!
都会ロンドンから療養のために移り住んできた青年軍人と田舎村の冴えない娘のロマンス小説。素敵。
語り手が男性側だからわかりにくいけれど、村娘側の目線だったらこってこての恋愛小説である。
冴えない村村が都会から来た男性に着飾られ素敵に大変身! まさに 王道シンデレラストーリーだ。
ミステリーが主軸なのと男性目線であることが恋愛恋愛させ過ぎずに丁度良い塩梅である。
ミス・マープルの記憶力
ミス・マープルは村の住民の人間観察を趣味にしており、どんな人間がどう行動するかを知り尽くしている。その長年の人間観察による情報を事件にかかわる人間に照らし合わせ推理していく。行動心理学的だといえる。
ミス・マープルが凄いのはその記憶力だ。
凡人には誰が何をした時にどう行動したかを細かく事実だけを正確に覚えていられない。その記憶を必要な時に瞬時に思い出せることからもミス・マープルは賢い人だといえる。
今も昔も変わらない人間の本質
ミス・マープルのお話はいつも「田舎の村の人間関係こわっ!」と思う。
しかし今回は田舎とか村とか関係なく現代社会でも起こりそうな話だった。
無差別的な誹謗中傷手紙、それを受け取った人のさまざまな反応と発生した事件は今も昔も関係なくあり得そうだ。SNSとか。
時代も国も関係ない。人間の本質はいつの世もどんな場所でも変わらないのだなと思わされそれはそれで怖さを感じた。
まとめ
ミステリーとしてもロマンス小説としても面白い!
ミス・マープルの登場時間は短いけれど、あっさり事件の真相にたどり着く様は安楽椅子探偵らしい存在感を放つ。
アガサ・クリスティが自薦10作品のひつとに選んだ作品をぜひ読んでみてほしい。
以上、アガサ・クリスティ『動く指』 たまこの感想でした🐯