不思議ファンタジー森見ワールド炸裂!
連作短編集で読みやすい作品。
『宵山万華鏡』
宵山の夜に何かが起こる。
バレエ教室に通う姉妹が宵山見物で神隠し、学生達の青春群像劇、なぜか宵山の日が繰り返される一日からの脱出など、祇園祭の京都を舞台に様々な事件が起こる。
さまざまな宵山の姿はまるで万華鏡のように全てが交錯し繋がってゆく。
6編からなる連作短編集。
連作短編集で読みやすい
個人的にそれぞれ独立している短編集よりも、大きな流れを共有している連作短編集の方が読みやすいと思う。
不思議ファンタジーなお話の『宵山万華鏡』はちょっぴり怖いけれど、内容はそこまで暗い話ではない。
連作短編集の読みやすさと怖すぎない不思議ストーリーは小学生の読書にもオススメできる作品だ。
祭りのあとのような読後感
美しく幻想的な京都の祇園祭を6つの視点から見た連作短編集。
1つのお話を視点を変えた2編で描いている。面白おかしい話もあれば、祭りという非日常の雰囲気からか現実ではありえないような話もある。
学生たちの群像青春劇や迷子になってしまう姉妹のお話など、同じ祇園祭でもそこにいるすべての人にストーリーがあるのだ。
面白おかしい話は馬鹿馬鹿しいことに一生懸命で祭りの楽しい高揚感で溢れていた。
現実ではありえない話は、キラキラとした輝かしい京都の祇園祭も冷たく孤独感溢れる世界に見せた。
人生のほんの一瞬の体験であっても一生忘れられないような祭りでの不思議な出来事はちょっぴりホラーな雰囲気に感じられた。
この面白いとちょっぴり怖い不思議な出来事が全体的に怖くなりすぎずに絶妙でちょうどよい。
読了後には本当に祭りを体験していたかのような充実感と虚脱感や寂しさがありそれが心地よかった。
特に『宵山迷宮』編が好き
私が怖い系が好きというのもあり、6編の中では怖さ多めな『宵山迷宮』編が一番好きな話だった。
確信をついているようで何も分からない。ふわふわと翻弄されてしまうストーリーに物足りなさもありつつどっぷりと不思議な世界に浸れる。
曖昧な終わりかたに続編もあるのかも? と期待もしてしまう。
たぶん続編はないけれど、以前に読んだ『夜行』は世界観が似ているなと感じた。
夜行 (小学館文庫)のほうがホラー感強く怖い印象だが、もしかしたら世界観繋がってるかも? とワクワクしながら『宵山万華鏡』を読んでいた。
まとめ
連作短編集なので読みやすく、きらびやかな祇園祭と森見ファンタジーに引き込まれてサクサク読めた。
不思議系だけど怖すぎず小学生にもオススメできる一冊。