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アガサ・クリスティー『予告殺人』-ミス・マープル長編第4弾

ミス・マープル長編第4作品目
アガサ・クリスティ自薦10作品のひとつであり、江戸川乱歩が大いに面白かったアガサ・クリスティの8作品のひとつに選んだ『予告殺人』は期待通りに面白かった!

 

 

 


『予告殺人』

その朝、新聞の広告欄を目にした町の人々は驚きの声を上げた。「殺人お知らせ申しあげます。12月29日金曜日、午後6時30分より…」いたずらか?悪ふざけか?しかしそれは正真正銘の殺人予告だった。時計の針が予告の午後6時30分を指したとき、銃声が響きわたる!
大胆不敵な殺人事件にミス・マープルが挑む。

裏表紙より引用


アガサ・クリスティー
田村隆一
解説 三橋暁

(1950年に刊行されたもの)
全486ページ

 


イメージしやすく読みやすい!

新聞広告に出された「殺人予告」に退屈な村人たちは予告場所の家に集まる。
誰もがゲームかいたずらだと思っていたが、予告時間に停電になり銃声が響き渡った。

複数人いる部屋でおこった殺人事件、目撃者は暗闇とパニックで証言も曖昧だ。
ごちゃごちゃした状況なのに不思議と読みやすい。

部屋の見取り図も無く、しつこく描写されているわけでもない。
それでも部屋のインテリアや家具の配置や人物の場所が読んでいて映像としてなんとなくイメージできる。
物語の盛り上がりの緩急も映画や舞台のようだと思ったら、解説にもその点についてふれられていて納得した。

ストーリーがまっすぐ進んでいくので、ちゃんと読んでいけば事件について推理できて面白い。

 

 

動機は早くから判明

 

はやい段階で『予告殺人』の動機は莫大な遺産をめぐるものだと判明する。

動機はわかっても動機を持つ者がいない。ひたすら人間観察が鍵となるミステリーはまさにミス・マープル向きである。

 

殺人の動機によくあるのが色恋、金銭、憎悪。

このなかでは金銭については恨みを買わないように回避できるのではないかと思う。

遺産をのこす人がトラブル回避のためもっと気を付かっていれば、殺人事件は起きなかったかもしれない。
遺産なんてものがあったから狂わされてしまった犯人にも同情してしまう。もちろん殺された人にも。


時代背景

1950年刊行の作品で作中はおそらく第二次世界大戦後の英国。
殺人現場の家のメイドは避難民で迫害を受けた過去があったり、闇市でバターを手に入れていたり。


日本の闇市はお米や味噌などの調味料を取引をしていたイメージなのだが、イギリスの闇市の取引が割りと贅沢品なところに裕福さがでている。
田舎村に住むミス・マープルツイードスーツにお洒落な帽子とティータイム。ハウスメイドもいて家事はしなくていい。

羨ましいほどセレブに感じるものの、小説から受ける印象としては当時の英国の「普通」なのだと思う。たぶん。

しかし戦争の影響でいままでのミス・マープル三作よりは人々の生活が厳しくなっているのが読みとれる。

 

今回のミス・マープルは療養と休暇を楽しんでいるところに事件を耳にし捜査に関わるのだが、それが高級ホテルなのだ。

甥っ子の小説が売れたことで高いホテルに招待されたとのことから、ミス・マープル自身はは戦後の厳しい生活は送っていないのかもしれない。

 

戦後のごたごたで経歴詐称がしやすい時代というのも登場人物に不信感が増してミステリーに効いていて面白い。

過去の英国の雰囲気を感じとれてるのも古い作品の楽しめるところである。

 

まとめ

ミス・マープルシリーズ第4弾
新聞広告に掲載された殺人予告に退屈な村人は興味津々で集まる。ゲームかいたずらだと思っていたら本当に殺人事件が起こってしまう。
映像としてイメージしやすく、物語の盛り上がりの緩急も映画や舞台のようで読みやすい。
注意深く読んでいけば読者にも推理できそうなミステリー作品!


以上、アガサ・クリスティー『予告殺人』 たまこの感想でした🐯

 

 

2020年はアガサ・クリスティー生誕130周年、デビュー100周年!
アニバーサリーイヤー企画として『予告殺人』の新訳版が刊行されました。