阿津川辰海「水槽城の殺人」と斜線堂有紀「ありふれた眠り」の二作品が収録された一冊
どちらの作品もその作家さん“らしさ”全開で面白かった!作家さんファンなら読むべし!
どちらの作家さんの作品を初めて見る人にも、作風を把握しやすいのでオススメします!
《《この挑戦、ネタバレ厳禁》》
阿津川辰海が描く「奇怪な城の密室殺人」
VS.
斜線堂有紀が描く「死体と眠る犯人」
『あなたへの挑戦状』
本書には、あなたへの挑戦状が含まれています。
『紅蓮館の殺人』『透明人間は密室に潜む』の阿津川辰海と
『楽園とは探偵の不在なり』『廃遊園地の殺人』の斜線堂有紀が
「あなたへの挑戦状」というテーマで小説を書いて競い合う!
加えて、競作過程を描いたネタバレ満載の「競作執筆日記」と「ミニ対談」を収録。
阿津川辰海「水槽城の殺人」
──巨大な水槽のある円柱型の建物「水槽城」で怪死事件が発生。犯行当時、水槽で現場は隔離されていた。
斜線堂有紀「ありふれた眠り」
──犯人は犯行後、死体の横で一晩眠っていた。才能あふれる妹を持つ凡人の兄は、とある秘密を妹に話せずにいた。
帯より引用
阿津川辰海 斜線堂有紀
2022年9月27日発行
全288ページ
「水槽城の殺人」阿津川辰海
巨大水槽が目玉のゲストハウス「水槽城」に宿泊していた二組の夫婦。そのうちの一人が殺害されたが死体発見現場は巨大水槽によって広義の密室であった──。
登場人物の少なさに「これは私でも簡単に謎解きできるんじゃない?」と侮っていた自分を殴ってやりたい。大掛かりな館ミステリーはさすが阿津川辰海先生!納得のおもしろさ。
この館ミステリを組み立てについて少し語られているので、あとがきにあたる執筆日記も忘れずに読んでほしい。
「ありふれた眠り」斜線堂有紀
絵の才能にあふれる丹内千百合が美大受験のため兄の丹内一寿の家に泊まり来た。そんな折、兄の勤め先で殺人事件が起こり──。
兄の抱える秘密と妹への劣等感。単なるミステリーではない家族もの小説としても面白い作品だった。読後なんともいえないカタルシスを感じてよかった。
この兄妹の悩みはこれからの時代の悩みであるといえるだろう。
競作執筆日記
執筆日記あとがき。なぜ競作するに至ったか、それぞれ二人の作家の小説の構成の仕方や働き方がこの執筆日記から垣間見えてなかなか面白かった。
ここで『あなたへの挑戦状』というタイトルの意味がわかる瞬間はいいサプライズだった。ただ最初から競作であることを知ったうえで読んだほうがわくわくしたのではないかとも思った。
まとめ
二人の人気ミステリ作家がお互いに「この謎を解いてみろ!」とミステリー設定を突きつけ、相手から与えられた設定でミステリーを書く熱き競作『あなたへの挑戦状』!
どちらの作品もその作家さん“らしさ”全開で面白かった!作家さんファンなら読むべし!
どちらの作家さんの作品を初めて見る人にも、作風を把握しやすいのでオススメします!
以上、阿津川辰海 斜線堂有紀『あなたへの挑戦状』たまこの感想でしたฅ(´꒳ `ฅ)ꪆ