エルキュール・ポアロ シリーズ5作目
『青列車の秘密』
走行中の豪華列車〈ブルー・トレイン〉内で起きた陰惨な強盗殺人。警察は被害者の別居中の夫を逮捕した。必死に弁明する夫だが、妻の客室に入るところを目撃されているのだ。だが、偶然同じ列車に乗り合わせたことから、事件の調査を依頼されたポアロが示した犯人は意外な人物だった!
新訳でおくる初期の意欲作
裏表紙より引用
ポアロシリーズ5作目
訳 青木久惠
解説 北川次郎
2004年7月15日発行
(1928年発表)
全447ページ
ゲストヒロイン キャサリン・グレー
“セント・メアリ・ミード村”で高齢者のお世話係キャサリン・グレーが莫大な財産を相続したことが話題になっていた。
“セント・メアリ・ミード村”といえば、ミス・マープルの村だ〜!と嬉しくなる。
(そういえば私の曖昧な記憶では、ミス・マープルシリーズで高齢女性のお世話係をしていた賢い女性が村を飛び出て旅にに出ていたような……?)
キャサリン・グレーは大金を手にしても驕らず浮ついたりせず地に足つけた賢い女性だ。
旅の途中でポアロと出会い、事件に遭遇し、彼女の恋模様もストーリーに大きく影響する大切なゲストヒロインキャラ。
セント・メアリ・ミード村出身のキャサリン・グレーの存在とロマンスサスペンス風なストーリー。ポアロの登場が遅かったこともあり、一瞬「ミス・マープルシリーズの小説だったかな?」と錯覚してしまった。
ラストでは聡明なキャサリン・グレーが“彼”を受け入れたのかどうかが気になるところ。
ロマンスサスペンス
歴史的に価値のある〈火の心臓〉と呼ばれる赤いルビー。持ち主は非業の死を遂げるといわれるもアメリカ人富豪は溺愛する一人娘のためにルビーを手に入れる。
そのルビーを贈られた娘は豪華寝台列車ブルー・トレインで殺害されてしまいルビーも行方不明になってしまう。
この富豪の娘ルースはイギリス人貴族の夫と不仲で、夫婦そろって不倫中となかなかのドロドロ展開。
火の心臓ルビーは物語に重要な役割があるのだが、どろどろの人間模様のせいでせっかく逸話のあるルビーの存在感が薄くなっていて勿体ない。
ポアロ登場まで長いこと、ヘイスティングス(語り手)不在のため物語の視点転換が多すぎて入り込むのに手こずってしまった。
人間関係のぐだぐださも相まって全体的に冗長だと感じた。
面白かったのだけれど、ポアロミステリーとしてというよりはロマンスサスペンスとして好きな話。そして小説より映画やドラマで映えそうだなと思う。
魅力的なポアロ
ヘイスティングスが語り手の話では己の頭の中でのみ推理をするポアロへの愚痴もはいってくるのでポアロの魅力が伝わりきらない。
今回はしょんぼりしたポアロやパパ・ポアロとして若い娘さんに助言したりと素敵なところをたくさん見ることができた。
フランス語を話すベルギー人ポアロはよく女性を褒め称える。大げさな表現だなと感じるのは日本人視点だからかと思いきや、作中のイギリス人女性からみてもポアロの立ち回りは大げさな表現なのだと分かる場面があって笑ってしまった。
鏡は真実を映しますが、人はそれぞれ違った場所に立って鏡をのぞいています
人生は汽車ですよ、走り続けるんです。
汽車をお信じなさい。汽車を走らせているのは神ですからね。
汽車をお信じなさい。そしてエルキュール・ポアロをお信じなさい──彼は何でも知っていますよ
これらのポアロの言葉が好き。
まとめ
ポアロの素敵おじさまぶりがたくさん見られるロマンスサスペンスあふれるミステリー。
ポアロ登場までが長く、ゲストヒロインのキャサリン・グレーの存在とでなんとなくミス・マープル風に感じた。
以上、アガサ・クリスティ『青列車の秘密』たまこの感想 でしたฅ(´꒳ `ฅ)ꪆ