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綾辻行人『最後の記憶』感想−幻想的ホラーと現実的な恐怖

 

 


最後の記憶 (角川文庫)

『最後の記憶』

脳の病を患い、ほとんどすべての記憶を失いつつある母・千鶴。彼女の心に残されたのは、幼い頃に経験したという「凄まじい恐怖の記憶」だけだった。突然の白い閃光、ショウリョウバッタの飛ぶ音、そして大勢の子供たちの悲鳴──。死を目前にした母を今なお苦しめる「最後の記憶」の正体とは何なのか? 波多野森吾は、母の記憶の謎を探り始める……。名手・綾辻行人が奇蹟的な美しさで紡ぎ出す、切なく幻想的な物語の迷宮。

裏表紙より引用

綾辻行人 

解説 千野帽子

平成19年6月25日発行
(初刊 平成14年4月)

KADOKAWA

全509ページ

 

幻想系ホラー

認知症になった母は記憶を失っていくなか幼い頃の強烈な記憶だけは忘れられない。母が怯えるトラウマは何なのかを探るため森吾は母のルーツをたどる。

トラウマを探りたい気持ちと探った所でどうしようもない病の進行。
なぜ森吾はトラウマを探りたいのか。森吾も幻聴や幻覚を見るようになりだんだんと病んでいく。
ノスタルジックさもあり幻想的なオカルト風でなかなか面白かった。

 

怖いポイント

認知症になった母は息子のことも自分自身のこともどんどん忘れ急速に衰えていく。その姿を見るのことは子供からすれば受け入れがたい。しかもその病は遺伝するかもしれない。
母の認知症が遺伝性のものであれば病の母の姿は未来の自分の姿になるかもしれない恐怖。そのせいでなかなかお見舞いにもいけない心境が丁寧に描かれている。
来るかわからない未来を憂う……。
この現実的な有り得る恐怖が一番怖かった。
じわじわと恐怖が侵食してくる。


もちろんオカルトホラー部分だったり母千鶴のトラウマ部分についてもゾクッとする怖さはあったが、主人公の森吾がそこまで恐怖を感じていないということもあり恐怖度はそこまで高くない。

どこの怖いポイントに恐怖を感じるかは人それぞれ読み手の立場や経験などによって変わると思う。

 

オカルト>ミステリー

母の幼い頃のトラウマの意外な真相。
幻想オカルト要素が強いのでホラージャンルではあるが、謎がだんだんと解き明かされていく様はミステリーでもある。


森吾は真相は受け入れたが真実からは目を逸らしたのではないだろうか。
どこかスッキリしない終わりはやはりミステリーよりホラー。それも オカルト>ホラーだと思う。

読後にあれこれ考えるのが楽しい世界観だった。

 

まとめ

認知症の母が最後まで忘れられない記憶とは何なのか。
トラウマの原因を探る森吾がたどり着いた幻想的で残酷な真相。なにより現実的かつ身近に有り得る恐怖はじわじわ系ホラー!
オカルト要素について読後にあれこれ考えるのが楽しい!

 


以上、綾辻行人『最後の記憶』たまこの感想でしたฅ(´꒳ `ฅ)ꪆ