東野圭吾『ある閉ざされた雪の山荘で』
タイトルの通り「雪山系クローズドサークル」が書かれた東野圭吾作品。
ノンシリーズ作品なので気軽に楽しめる一冊だった。
『ある閉ざされた雪の山荘で 』
1度限りの大トリック!
たった一度の大トリック! 劇中の殺人は真実か?
俳優志願の男女七人、殺人劇の恐怖の結末。驚愕の終幕が読者を待っている!
早春の乗鞍高原のペンションに集まったのは、オーディションに合格した男女七人。
舞台稽古のため集まった彼らは、「豪雪に襲われ孤立した山荘での殺人劇」を演じて過ごすことになる。
脚本もなにもない手探りの舞台稽古。
一人また一人と現実に仲間が消えていくにつれ、彼らの間に疑惑がうまれた。
果たしてこれは本当に芝居なのだろうか?
こんなクローズドサークルがあったとは!
【クローズド・サークル】ミステリ用語としては、何らかの事情で外界との往来が断たれた状況、あるいはそうした状況下でおこる事件を扱った作品を指す。(Wikipedia)
クローズドサークルはミステリーの中でも特に好きなジャンルだ。
逃げ場のない閉鎖的な空間でやむを得ず過ごさなければいけない。この状況だけでも不安を抱き、さらには殺人事件までおこってしまう。現実だったら精神蝕まれるよね。
読んでいるだけなのにまるで自分もその場にいるかのように「こいつが犯人か?」「怪しい」「もうだれも死なないで」と入り込んでしまう。だからクローズドサークルミステリーは面白いのだ。私が単純だからとも言える。
『ある閉ざされた雪の山荘で 』は、クローズドサークルであってクローズドサークルではない!
俳優志望の男女七人は「豪雪に襲われ孤立した山荘での殺人劇」を演じるのだ。
演じているだけなので実際には雪はない、電話も通じる、クローズドされていない。
クローズドされていないのに「舞台稽古だから」と豪雪に襲われた山荘であるかのように過ごす俳優志望たち。この設定がうまい。うますぎる。
「こんなクローズドサークルがあったのか!」と驚嘆した。
芝居か?現実か? 精神的に追い詰められる異常な空間
「豪雪に襲われ孤立した山荘での殺人劇」の舞台稽古をしていると殺された役は一人また一人と姿を消していく。
しかし、これは本当に芝居なのだろうか? という疑惑がでてくる。
現実に人が殺されて行方不明になっているのではないか……そうは思っていても芝居を続けていく若者たち。
この疑念こそがオーディションの一環なのかもしれない、そう信じているのか信じたいだけなのか。
疑いがでた時点で帰ってもいいのだ。クローズドされていないのだから。
帰る選択肢を選ばせない「俳優志望の舞台稽古」という設定がここでまた光る。
まとめ
分類するならば「雪山系クローズドサークルミステリー」、設定がうまくてすべての登場人物が疑わしい。ハラハラできてとても面白かった。
クローズドサークルという外界との連絡が断たれた不便な空間のため、30年くらい前の作品だけれどもまったく古さを感じなかった。
ノンシリーズ作品なので気軽に楽しめるオススメの一冊。
以上、東野圭吾『ある閉ざされた雪の山荘で』 たまこ の感想でしたฅ(´꒳ `ฅ)ꪆ