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アガサ・クリスティー『ゴルフ場殺人事件』感想-ヘイスティングズの恋物語事件!

 

エルキュール・ポアロシリーズ第2作品目

 

 
ゴルフ場殺人事件 ポアロシリーズ (クリスティー文庫)

 


『ゴルフ場殺人事件』

南米の富豪ルノーが滞在中のフランスで無惨に刺殺された。事件発生前にルノーからの手紙を受け取っていながら悲劇を防げなかったポアロは、プライドをかけて真相解明に挑む。一方パリ警視庁からは名刑事ジローが乗り込んできた。たがいを意識し推理の火花を散らす二人だったが、事態は意外な方向に……新訳決定版。

裏表紙より引用


エルキュール・ポアロ長編第2作目

アガサ・クリスティ
田村義進 訳

解説
俳優・声優 熊倉一雄

早川書房

2011年7月15日 発行
(1923年発表)

全371ページ


名探偵ポアロvsパリ警察のジロー刑事

富豪ルノーから探偵ポアロに助けを求める手紙が届いた。ポアロはすぐさまルノーが滞在しているフランスへと向かうが、ポアロヘイスティングズが到着した朝にルノーは殺害されていた。
捜査に加わるポアロだったが、パリ警察の優秀と名高いジロー刑事からライバル心を燃やされる。

ポアロの推理の根幹は“秩序だて”と“体系づけ”にある。
理にかなった推理で事実を整理整頓し、何より大事にしてるのは事件の心理的側面を正確にとらえること。
足跡や煙草の灰などの具体的な証拠にはさほどに重きを置かないのがポアロ流である。

反対にジロー刑事は泥臭く証拠を集めるタイプだ。
地面に這いつくばって証拠を探すジロー刑事の姿に、ポアロの助手ヘイスティングズが羨ましそうだった。ヘイスティングズはなかなか教えてもらえないポアロ流推理にやきもきしているのだろう。

良きライバルになれればいいのだけど、ジロー刑事が無礼すぎて好きになれない。
言動も失礼だ。

「とうとうオツムがいかれてしまったようですね」

これさすがに侮辱しすぎだ。もちろんポアロも怒る。
ジローは自分もポアロに侮辱的な態度をとられたというが、そんな場面あったかな?
ポアロは割りと紳士的だったよ。


敵対心を持つのは勝手だけども殺人事件の解決を競うのも不謹慎でなんだかなと。探偵ものでは競って推理するのはよくあることだけども。
ジローはパリ警察の刑事なので今後そんなに関わりにはならなさそうなので安心している。

 

どんでん返しッ……?

分類としてはどんでん返しミステリーに思える。たぶん。
語り手のヘイスティングズ目線では、推理があっちゃこっちゃにいっては振り回され、どんでん返しからのどんでん返しのように見える。
しかし、落ち着いて頭のなかで推理を進めているポアロはずっと落ち着いていた。
振り回されもしないし、ポアロの推理自体はどんでん返しもされていなかったと思う。

真相に近づくにつれ怒濤の展開が続く物語のなか、ポアロの落ち着いた推理は派手さはなくとも“名探偵”ぶりを発揮していて面白い。
犯人を罠にはめたりするシーンもよかった。しがらみのある警察には出来ないような無茶な立ち振舞いをしても許されるのが探偵ものの面白さである。

 


ヘイスティングズという助手

『ゴルフ場殺人事件』は名探偵ポアロの友人で助手役ヘイスティングズの物語といえる。
というか「ゴルフ場」の要素が少ない。死体発見現場が建設中のゴルフ場のバンカー(砂の池みたいな窪地)だったのだが、この事件において死体遺棄場所はあまり意味はなくゴルフ場の印象が残らない。
タイトルを『ゴルフ場殺人事件』としたのは損していると思う。
ストーリーに合わせるならば「大富豪脅迫事件」「ヘイスティングズ恋の事件」かな。

それくらいヘイスティングズ恋物語がメインだ。
ヘイスティングズは列車で出会った謎の女性“シンデレラ”に恋して、バカして、間抜けさらして、殺人事件よりポアロより“主人公”だった。
もう本当にヘイスティングズにイライラさせられちゃうのですよ。
現代だったらヘイスティングズの愚かさにもう少し厳しい罰が下されていただろう。
昔だからこその緩さに救われていると思う。処刑方法がギロチンなところは昔の恐ろしさを感じるけどね。

そういえばシャーロック・ホームズの助手ワトソンくんも事件で出会った女性と急展開に結婚していたなとふと思い出した。
すぐ結婚!となるのは物語(フィクション)ゆえなのか時代ゆえなのかは判断しかねる。

 

 

まとめ

フランスで起きた富豪殺人事件。証拠&肉体派のジロー刑事と理論&頭脳派ポアロはどちらが先に謎を解くのか。そんなワクワク展開の面白いミステリーも霞むくらい『ゴルフ場殺人事件』はヘイスティングズ恋物語だった!

 

以上、アガサ・クリスティー『ゴルフ場殺人事件』たまこの感想でした🐯