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『魔術の殺人』アガサ・クリスティ-魔術とは奇術!


ミス・マープル シリーズ長編第5作品目

 

 
魔術の殺人 (クリスティー文庫)

 

 

『魔術の殺人』

旧友の依頼で、マープルは変わり者の男と結婚したキャリイという女性の邸を訪れた。そこは非行少年ばかりを集めた少年院となっていて、異様な雰囲気が漂っていた。キャリイの夫が妄想癖の少年に命を狙われる事件が起きたのも、そんななかでだった。しかもそれと同時刻に別室では不可解な殺人事件が発生していた!

裏表紙より引用


ミス・マープル シリーズ長編第5作品目

アガサ・クリスティー
田村隆一

解説 加納朋子

早川書房

2004年3月15日発行
(1954年に発表された作品)

全380ページ


人間関係が複雑すぎる!

トリックではなく人間関係の複雑さに泣かされた。

ミス・マープルは学生時代の旧友から「妹に会ったら普通でない印象を受け、心配と不安でたまらなくなった。鼻の効くマープルが妹のところに行って不安になった理由を確かめて欲しい」と頼まれた。

この“妹”がキャリイ・ルイズという女性で、彼女もマープルの旧友である。そのため問題もなくすんなりと邸に招かれた。

そこで事件が発生するのだが、邸にいるのはキャリイ・ルイズとその夫ルイス、キャリイの前々夫との娘、孫娘、前夫の継子……等々、もう関係性も複雑だし似た名前もいたりと覚えきれないのですよ。


キャリイ・ルイズの前々夫グルブランドセンは慈善事業に熱心な大富豪だった。今回、事件の現場となったキャリイたちの住む邸は、グルブランドセン信託が運営する未成年犯罪者の訓練施設なのだ。
当然ながら施設に暮らす少年犯罪者たちとも交流がある。
家族の関係性だけでなく追い討ちをかけるのうな複雑設定に、相関図がほしいと切実に思った。


お金持ちの邸で起こる殺人ならその動機は金銭によるものと考えられるため、適当に読んで人間関係を把握しないままというわけにもいかなかった。
別になんとなくで読んでもいいのだろうけども、ミステリーは推理しながら読む派なのでキチンと把握したおきたかったのだ。
この人間関係の把握に手こずり挫折しそうになった。


理想主義者キャリイ・ルイズ

ミス・マープルの旧友キャリイ・ルイズ。

キャリイ・ルイズを知る者は彼女のことを「浮世離れしている」「理想主義者」「守って支えてあげなければならない」 と信じて疑わない。
確かに非行少年の更正に尽力する彼女は善人であり、善人すぎる理想主義者という一面がある。
しかしキャリイ・ルイズのもつ他の面をミス・マープルは見抜く。
ラストのこの場面は特にお気に入りのシーンだ。
ある意味でミス・マープルよりも鋭い女性かもしれない。

 

キャリイ・ルイズの「とびぬけた善人になれることの出来る人間は、やっぱり極悪人にもなれる」という言葉。

深く納得させられる言葉であり、この作品のテーマともいえる。

私にはキャリイ・ルイズもとびぬけた善人だと思えるので、この発言をしたキャリイ・ルイズ本人は自身をとびぬけた善人と思ってないのか、それとも自分にはそういった面もあると理解したうえでの発言なのか。いろいろ考えを巡らせてしまう。

 

魔術とは奇術!

『魔術の殺人』という題名にどんなイメージを抱くでしょうか?

私は、突然の発火や氷漬けの死体などの殺人事件を思い浮かべていた。

これがちょっとニュアンス違いだと気づいたのは物語をだいぶ読み進めてからだった。
“魔術”とはマジック(魔法)ではなく、マジシャンなどが行うマジック(手品)のトリックのことを指す。
どちらかというと“奇術”と言うほうがあっているかもしれない。


氷漬け死体を予想してただけに、“魔術”のトリックは少しばかり肩透かしをくらってしまった。
西洋で魔術と言われたら魔法的なものや大がかりなものを期待しちゃうのも仕方ないよね。

 


まとめ

一番の難関は複雑な人間関係の把握!
今までにもミス・マープルの友人は登場してきたが、学生時代の旧友キャリイ・ルイズとの信頼関係が素敵だった。マープルにも勝るとも劣らない感覚の持ち主であり、浮世離れした雰囲気を纏うキャリイ・ルイズはミス・マープルシリーズの中でもお気に入りのキャラクターとなりそうだ。


以上、アガサ・クリスティー『魔術の殺人』たまこの感想でした🐯

 

 

 


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