『名探偵のいけにえ-人民教会殺人事件』
奇蹟 VS 探偵!
ロジックは、カルトの信仰に勝つことができるのか?
病気も怪我も存在せず、失われた四肢さえ蘇る、奇蹟の楽園ジョーデンタウン。
調査に赴いたまま戻らない助手を心配して教団の本拠地に乗り込んだ探偵・大塒は、次々と不審な死に遭遇する。
奇蹟を信じる人々に、現実世界のロジックは通用するのか?
圧巻の解決編一五〇ページ!
特殊条件、多重解決推理の最前線!
白井智之
2022年9月15日発行
新潮社
全416ページ
『名探偵のはらわた』シリーズ
『名探偵のいけにえ』は名探偵のはらわたシリーズと呼ばれるシリーズの二作目です。
一作目は2020年発行の『名探偵のはらわた』ですが、内容的には続きものというわけではないのでどちらから読んでも大丈夫!
私も『名探偵のはらわた』は未読でしたが問題なく読めました。
ただちょっとグロいシーンもあるので苦手な人は注意しましょう!
モチーフ
こちらのシリーズは実際にあった事件をモチーフに書かれているようで、前作『名探偵のはらわた』は日本で起きた複数の殺人事件がモチーフとなっていたようです。
そして『名探偵のいけにえ』のモチーフは「人民寺院集団自殺事件」でした。
この事件知ってる!!!
大好きな海外ドラマ『クリミナル・マインド FBI行動分析課S4#3「カルト教団の行方」』でこの事件に触れていて、興味を持ち調べたことがありました。
読み進めれば進めるほど、まるで実際の事件を見聞きして書き起こしてるのかと錯覚するほどでした。
Wikipediaで改めて調べてみたところ、やはり実際にあった事件が概ねのレールとなっていることがわかります。
もしかしてあの事件の真相はこの小説の通りなのではないかと思わせるほど物語の中へ深く入り込めます。
事件を知っていたため作中の人民教会に訪れる結末は推測できてしまったのは残念なところでしょうか。
知っているからこそのハラハラドキドキの臨場感もあったけども。
テーマ的にもちょっと読むのに体力をつかうミステリーでした。
キャラの癖が強い
大塒探偵事務所の助手・有森りり子は、カルト教団を調査する調査チームの一員として本拠地ジョーデンタウンに乗り込みます。
しかし帰国予定日を過ぎても連絡がつかず、りり子を奪還するため上司である大塒探偵もジョーデンタウンへと向かう──。
主人公の大塒も助手のりり子も他の調査チームもほとんどの登場人物の癖が強い!
ストーリーを円滑に進めるために仕方ないのかもしれませんが、情に厚いのか薄情なのかキャラの性格に一貫性がないように感じてしまい感情移入はしにくいです。
“ストーリーは面白かった”よりも、“登場人物に魅力を感じることができない”という印象が上回ってしまいました。
無駄がない
本拠地のジョーデンタウンに乗り込むまでの日本でのやりとりが少しだけ長いうえ、ジョーデンタウンに潜り込んでからはまた一から世界観を掴まなければならず読みにくい構成だなと思っていました。
しかし、ラストの怒涛の巻き上げで前半部分も作中のちょっとしたあれこれもほとんどすべてに“無駄がない”ということを思い知らされた!!
一般人視点とジョーデンタウンに住む神の力を信じる者視点での事件の見方の違いなど、何が本当なのかわからない異質な空気感の中でもしっかりとロジカルなミステリーとしてあますことなく楽しめました。
タイトルも表紙も見え方が変わる!
ただ、最後まで読み切った感想は「面白かった!」なのだけど、途中までハマりきれなくて挫折しそうになった……。好みは分かれる作品だと思う。
ハマれない人はとことんハマれないかも?
まとめ
実際の事件をモチーフとした特殊条件ミステリー!
何回転するねん推理ショーは読むのに体力を使う……。しかし怒涛の畳み掛けに読みきったときの満足感が良い!!
ハマれない人はとことんハマれないかも?
以上、白井智之『名探偵のいけにえ-人民教会殺人事件』たまこの感想でしたฅ(´꒳ `ฅ)ꪆ