陰湿じわじわ系ホラー!
サイコヒューマンドラマとしても面白い作品だった。
『ババドック 暗闇の魔物』
(原題:The Babadook)
【公開】
オーストラリア 2014年5月22日
日本 2015年10月3日
【上映時間】
84分
【製作国】
オーストラリア
【監督】
ジェニファー・ケント
【脚本】
ジェニファー・ケント
【出演者】
エッシー・デイヴィス
ノア・ワイズマン
【ジャンル】
ホラー、ドラマ
『ババドック 暗闇の魔物』
あらすじ
アメリアは息子サミュエルを育てるシングルマザー。
夫は息子のお産に向かう途中で交通事故で亡くなっていた。
サミュエルは学校で度々問題を起こし、彼女の頭を悩ませていた。
夜になかなか寝付くことが出来ないサミュエルに、母親は本を読み聞かせるのが習慣だった。
そんなある夜、サミュエルがアメリアに読んで欲しいと1冊の絵本を持ってきた。
『ババドック』というその絵本は彼女の見たこともないもので、どこか薄気味の悪い絵本であった。
それはババドックという怪物が家に入ってくるという子供かなは恐ろしい内容で、それ以降、サミュエルはババドックに怯えてしまう。
ババドックは物語の話で現実にはいないとアメリアは言い聞かせるが、2人の周囲で次々と奇怪な現象が起きるようになる──。
ネタバレ無し感想
「ババドック」という魔物に怯えるストーリーは典型的な王道ホラーといえる。
しかし、ホラーにしては決定的に魔物とかが出てくる訳ではないので、人によってはそんなに怖くはないし「これってホラー?」と感じるだろう。
私は怖かったけどね。
「夜中に部屋に何かいる」系のホラーは、寝る時やお風呂入る時に思い出して怖くなっちゃう。
しょっちゅう後ろ確認するし、『ババドック 暗闇の魔物』を見た夜は電気つけたまま寝ましたけど。
ホラー的な怖さは少なめだけれども、アメリアとサミュエルの母と息子の俳優さんの熱演が素晴らしく、問題児な息子をもつシングルマザーの生活の鬱々さがリアルでこわい。
サイコヒューマンドラマといった感じだ。
ただひとつ注意してほしいのが、この映画ちょいちょい「虫」が出てくる。
虫が苦手な人はそのシーンは目隠ししよう。
ネタバレ有り感想
俳優の熱演
母親アメリアと息子サミュエルの俳優さんの熱演が素晴らしい。
最初は隣人のお婆さんローチさんにも優しいアメリアも息子の攻撃的な問題行動で不眠となりやつれていってしまう。
不眠からの体調不良で心の余裕もなくなり、アメリアがどんどん他人に攻撃的になっていく変化がリアルで恐ろしい。
問題児な息子を抱えるシングルマザーの苦悩が見ていて辛くて辛くて。
サミュエルも演技とは思えない問題児ぶりだった。
母子な2人だけで暮らすには広すぎる家(日本人感覚)と、暗い室内。
日光が電気がという暗さと、室内の壁紙や家具のモノトーンの色合いがまたどんよりした雰囲気を醸し出している
マジックのハウツーDVD見てるサミュエルや、眠れないからってTVをザッピングするアメリアにも違和感ありまくり。
怖いならハッピーなDVDとか見ようよ。
ここのお家はカラフルなオモチャもなく、子供用のアニメDVDもなく、楽しい要素はすべて排除されているみたいだ。
母親の苦悩と問題児の描写がリアルなのは演技のうまさだけでなく、こういった細かい演出と脚本も良いからかもしれない。
「ババドック」について
眠くて眠くて仕方ないのに眠れないって本当に辛いのだ。
遊ぶぞーって徹夜するのとは違う
ただでさえアメリアは精神的にまいっているのに、「ババドック」という怪物は家に潜み家人を眠らせない魔物が取り付いてしまう。
この「ババドック」については終わり方がふわっとしていたため、2つの解釈ができる。
説その①
【アメリアの病んだ心が生み出した幻覚、妄想説】
アメリアが鬱っぽくなり妄想でババドックを見てしまう、ババドックに体を乗っ取られて心の底の闇を息子に叫んでしまった。最後はババドックを地下室に閉じ込めそこで飼う……というババドックという魔物は精神を病んだアメリアの妄想。
ラストでは心の闇は完全には消えないがうまく自分自身の一面として共存して受け入れた。
人生のうまくいかない一面や嫌なところも「そういうもの」と受け入れると生きやすいよね爽やかEND!
素直にみたらこの妄想説が一番しっくりくる。
説その②
【ババドックは本当に存在した説】
アメリアが病んでいたのは事実だ。
ただ、妄想説にしては理解出来ないこともあった。
覚えのないババドックの絵本がいつの間にか家にあったのは何故か。
破いて捨てた絵本が修復されて玄関に置かれていたのは、精神的に不安定になったアメリアが無意識(夢遊病のよう)に修復して置いたとも考えられる。
しかし、初めてババドックの絵本を読んだ時にはアメリアはそこまで精神を病んではいなかった。最初は隣人のお婆さんローチさんにも優しい女性だったのだ。
では何故、覚えのないババドックの絵本がサミュエルの本棚にあったのか?
また、息子サミュエルも同じババドックを感じている様子もアメリアの妄想説に疑問が出てくる。
サミュエルはサミュエルで精神を病みババドックという妄想に取りつかれていたとする。
それにしてもババドックという存在がいる場所の気配察知がアメリアと被りすぎている。
別の人間が同じものに恐怖を感じて同じ魔物の妄想を見たとしても、同じ場所で同じババドックの行動を共有するのだろうか?
ババドックが本当に存在していたからではないか?
逆に魔物が本当に存在した説で謎になるのは、ラストでアメリアとサミュエルが憑き物が落ちたかのように爽やかさんになったことだ。
魔物が存在していて、その魔物はまだ地下室にいるのに爽やかになれますか?
これについては、魔物を受け入れたことで精神的な弱さ不安定さを受け入れるということも出来るようになったのかな。
不完全、不必要なもの(魔物)があってもいいじゃないと許容し、完璧主義じゃなくなったことで精神的な余裕が生まれ心の負担が減った。
と無理矢理に解釈した。
いいのだ。映画で語られてないことは見た人の好きに想像して楽しもう。
私はババドックという魔物は本当に存在していた説を推したい。
妄想説もありそうだけれども、本当に魔物が存在していたとうほうがホラー的には怖くて好き。
アメリアとその他の登場人物の関係
アメリアの夫はサミュエルが生まれる時に病院へ向かう途中に交通事故で亡くなっている。
サミュエルの誕生日は夫オスカーの命日になってしまい、アメリアは息子サミュエルより夫オスカーに生きててほしかったと心の底では思っていた。
このオスカーへの思いがババドックに利用され、妄想オスカーがアメリアの前に登場する。
ババドックの妄想オスカーしか登場しないため、そもそものオスカーの人柄は分からない。
アメリアが「サミュエルの思ったことをすぐに口に出す癖は夫に似ている」という発言が本当ならば、なんというかデリカシーはなさそうかな。
隣人のお婆さんローチさんはオスカーの小さい頃を知っているようだった。
アメリアの住む家はオスカーの育った家なのかもしれない。
オスカーの家族はいないのかな。
アメリアの家族は妹クレアと姪ルビーが登場していた。
妹クレアと仲違い気味になったけれど、クレアも悪い人間ではないと思う。たぶん。そう思いたい。
自分の家庭だけでもいっぱいいっぱいだったんじゃないかな。
やはり一番に守りたいのは我が子なわけで、娘を心配する気持ちの方が強く、姉アメリアのことも心配はしていたというのは本当だと思う。
頼れる人のいないアメリアがクレアたちと仲違い気味になったのは見ていて可哀想だった。
しかし、隣人ローチさんは
「あなたとサムのためなら何でもするわ」
と言ってくれたのだ。
他人にそこまで言えるローチさん素敵すぎる。
サミュエルからの電話で心配して夜中に家に様子を見に来てくれる優しいお婆さん。
こんな優しい人間になりたい。
仕事、子育て、サミュエルの問題行動への対処とアメリアの負担が大きすぎるが故にアメリアは病んでいってしまった。
ラストでは隣人ローチさんに素直に頼れって甘えられるようになっていたのでよかった。
まとめ
シングルマザーが精神的に追い込まれていく様子はババドックという魔物よりも恐ろしかった。
陰湿じわじわ系ホラーは怖さよりよりサイコヒューマンドラマ的な作品。
なかなか面白かったのでオススメ。
虫が出てくるので注意が必要。
以上、映画『ババドック 暗闇の魔物』たまこ の感想でしたฅ(´꒳ `ฅ)ꪆ
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