“令和のアルフレッド・ベスター”による、SF設定を本格ミステリに盛り込んだ、第二十九回鮎川哲也賞受賞作。デビュー作品。
『時空旅行者の砂時計』
瀕死の妻のために謎の声に従い、2018年から1960年にタイムトラベルした主人公・加茂。妻の先祖・竜泉家の人々が殺害され、後に起こった土砂崩れで一族のほとんどが亡くなった「死野の惨劇」の真相の解明が、彼女の命を救うことに繋がるという。タイムリミットは、どしゃがすべてを呑み込むまでの4日間。閉ざされた館の中で起こる不可能犯罪の真犯人を暴き、加茂は2018年に戻ることができるのか!?
カバーそでより引用
方丈貴恵 ほうじょうきえ
2019年10月11日発行
全313ページ
タイムトラベルの理由
SNSで話題の都市伝説 奇跡の砂時計!
砂時計のペンダントを拾うと、その砂時計が願いを一つだけ叶えてくれる──。
2018年の現代。巷で話題の都市伝説に出てくる“砂時計ペンダント”は妻が瀕死の危機にある加茂冬馬の手にやってきた。
不思議な砂時計は自我を持っておりマイスター・ホラと名乗った。ホラ曰く、加茂の妻伶奈は先祖から続く竜泉家の呪いで命が危ないのであり、1960年に起きた竜泉家の呪いの始まり「死野の惨劇」を解決すれば呪いも断ち切れるらしい。
そしてマイスター・ホラは加茂を過去へ連れて行ってくれる──。
怪しい!! 怪しいけれど妻を助けたい加茂は藁にもすがる思いで砂時計によって過去へタイムトラベルさせられ事件解決に挑む。
ちゃんと砂時計を疑いつつも拒絶せず話を最後まで聞く主人公の冷静さがいい。
タイムトラベルの細かいルール
砂時計ホラのタイムトラベルにはおおまかに4つのルールがある。
複雑そうなルールも意外と理解できてしまう。
このわかりやすさは作者の文章の書き方のうまさもあるが、私はドラえもんによってタイムトラベルの基礎が幼少期から植え付けられているからだと主張したい!
過去に戻ったら歴史を変えてはいけない、ちょっとしたことで自分が生まれなくなる未来になるかもしれない、ドラえもんを見て育った人間からすれば言われずもがな知っている“常識”だと思う。幼稚園児でも知っている。
幼少期からドラえもんによってタイムトラベル英才教育を受けたから理解しやすかったと言っても過言ではない!(ドラえもん過激派)
だからこそ1960年を生きる竜泉家の(SF好きな人達という設定とはいえ)現実離れした話を受け入れられる柔軟性とタイムトラベルへの理解力よ高さに感心する。
登場人物みんな冷静で頭がいい。
読みやすいSFミステリー
SFって難しそうで苦手意識があるのだけど、『時空旅行者の砂時計』は読みやすかった!
タイムトラベルのルール、殺人事件とSF部分の関わり方など、複雑な部分はたくさんあり決して子供だましなSF ミステリーというわけではない。話の展開が読みやすくすんなり頭に入ってくるのだ。
元の世界への影響についてはいろんな考察ができそうで読了後に誰かと語り合いたいと思った。
すでにシリーズ三作目まででているのでどんなふうに続くのかが楽しみだ。
まとめ
読みやすいタイムトラベルSFミステリー!
登場人物たちが冷静で頭がいいので特殊設定ミステリーもすんなり受け入れやすいストーリ展開となっていてSF苦手意識があっても読みやすい。
以上、方丈貴恵『時空旅行者の砂時計』 たまこの感想でした(ΦωΦ)