短編集のシリーズものだけどストーリーに繋がりはないので1〜3のどこから読んでもOK!
怖さを求めるなら『営繕かるかや怪異譚その参』をオススメします!
シリーズ過去作↓
『営繕かるかや怪異譚その参』
怖ろしくも美しい。哀しくも愛おしい──。これぞ怪談文芸の最高峰!
建物にまつわる怪現象を解決するため、営繕屋・尾端は死者に想いを巡らせ、家屋に宿る気持ちを鮮やかに掬いあげる。
恐怖と郷愁を精緻に描いた至極のエンターテインメント。全6編を収録。
発売日 2022年8月26日
全304ページ
待ち伏せの岩
景色の良い渓谷で営業しているフレンチレストラン「ローレライ」。塔のある小さな洋館のレストランは人気店だったが、窓辺に若い女性が目撃されて──。
怪異そのものについてはあっさり終わってしまったが、主人公でレストランオーナーの娘・多実の小さな不満の積み重ねがリアルで多感な時期に怪異な現象に魅入ってしまう流れがうまい。
火焔 かえん
姑と同居して数年後に夫が他界。順子は気性の激しい姑と二人暮らしとなり、絵に描いたような嫁いびりに耐え続けた。
その姑も他界しようやっと嫁いびりも終わるはずだったが──。
長年の姑からの嫁いびりにあっていた順子が可哀想で仕方なかった。虐待、モラハラ、マインドコントロールとでもいうのか。すっかり自分に自信をなくしていた順子が姑の呪縛から解放されていく様子にちょっと感動した。
歪む家
弥生の趣味はドールハウスをつくること。黙々と制作していくうちにドールハウスへの物語が膨らみ、それはやがて闇を纏い歪ませていく──。
これは特に怖く感じたお話。
一人暮らしの女性がつくったドールハウスに起こる異変。たまたま相談できる人がいたから良かったものの、「誰にも信じてもらえないかもしれない」ということが一番の“恐怖”だと思う。
誰が袖
城に近い古い町の古くて大きな家。先祖は藩の重鎮だったらしいその家には女の幽霊がでた。
子供の頃からその実家の納戸で女の幽霊を見ていた典利は家が嫌いだった。父の死後、父の頼みで家を潰し引っ越したが、なぜ父もあんなに家を嫌っていたのか。その理由に気がついてしまったときには既に自分も手遅れで──。
その幽霊は死をもたらすかもしれない……という話。幽霊相手にどうすればいいか途方に暮れるでもなく、なんとしても大切な家族を守りたい思いから現実的な解決策も考えている本気さがよい。その幽霊を見たことがある主人公・典利だけでなく、幽霊を見たことのない母も妻もオカルト話を本気で信じてくれたことに家族の絆を感じた。
骸の浜
真琴の家は城下町の河口、川が海になるぎりぎりの場所にあった。
祖父の代よりずっと前から、この街の近くで死体が浮くとこの家の庭には死者がやって来て自分の居場所を報せてくる。
昔はそれをありがたがられたが時代は代わり忌み嫌われるようになってしまった。だから真琴は今日も幽霊を見て見ぬ振りをする──。
昔はありがたがられた死体引き上げの占い事業。真琴の子供の頃にはすっかり忌み嫌われていたが、その時代もすでにむかし。真琴が大人になった現代では良くも悪くも周りに関心も少なくなってきているのかもしれない。時代の移り変わりの早さ、近年の人間の価値観の変化と柔軟性を感じた。
茨姫
響子は姉ばかりを偏愛してた母と折り合いが悪く絶縁していた。その姉は自殺し、母も姉を偏愛をこじらせながら他界した。
仕事の縁があり久しぶりに実家に住むことになった響子は片付けに精を出す。
しかし姉が首を吊った小屋には頑固なツルバラが生い茂り──。
疎遠だった姉と母が亡くなってから家族について向き合い始めた響子。姉が生きているときに姉妹のすれ違いを乗り越えられればよかったのにと思わずにはいられない。
ツルバラを通して響子と姉の繋がりが残ったのが好き。
まとめ
営繕かるかやシリーズ3作目は怖くてぞっとする話が多くて読後も薄気味悪さを引きずる良作なホラーだった。
短編集のシリーズものだけどストーリーに繋がりはないので1〜3のどこから読んでもOK!
怖さを求めるなら『営繕かるかや怪異譚その参』をオススメします!
以上、『営繕かるかや怪異譚その参』たまこの感想でした(=^・・^=)
コミカライズ版もでてる!