恥ずかしながらアガサ・クリスティ作品を読んだのは初めてだった。
と言っても、名探偵ポワロはドラマで見たことがあるし、かの有名な『そして誰もいなくなった』や『オリエント急行の殺人』はオマージュ作品やミステリー小説内でもよく登場していたため内容は知っていた。
ミス・マープルについても安楽椅子探偵もので英国田舎の老婦人が探偵役だということは当たり前のように知っていた。
今回はミステリーで世界一有名な女性名探偵、ミス・マープルの長編初登場作品『牧師館の殺人』を読んでみた。
『牧師館の殺人』
静かなセント・メアリ・ミード村で嫌われ者の老退役大佐が殺された。
現場は村の牧師館の書斎だった。
普段から隠し事が出来ないくらい何でも筒抜けな村での大事件。興味津々な人々によってあらゆる憶測が飛び交うなか、やがて若い画家ローレンス・レディングが自首した。
これで事件は解決したと思われた。
しかし殺されたプロザロー大佐の妻アン・プロザローが殺したのは自分だと自首したため警察の捜査は難航する。
鋭い観察力と深い洞察力を持った老婦人、ミス・マープルが人々の話を聞いて華麗に事件の真相を推理する。
ミス・マープルの長編初登場作品。
ミス・マープルはどんな人？
小説を読む前のミス・マープルのイメージは、かなりご高齢でお家で読書や編み物しながら推理していく華奢で小柄なか弱い70歳以上のお婆ちゃんだと思っていた。
全然違ったよね。
アクティブに庭いじりしていて驚いた。
お茶会でのお喋りを楽しみにしているごく普通の女性で特別目立つ人ではない。
年齢について具体的な数字は出てないが、1930年ごろ(出産や結婚、孫を持つ年齢が今よりも早かった時代)の話と考えると、ミス・マープルは『牧師館の殺人』の時点では60～65歳位、もしかしたら50代後半もあり得ると思えた。
「穏やかで魅力的な物腰の老嬢」
「村でいちばんの意地悪。村で起きることを残らず知っているうえに、そこから、とっても悪意のある推測をする」
村人がミス・マープルの人柄について受ける印象は様々のようが、基本的に恐ろしい人物として周囲には思われている。
面白おかしく噂話を広げるような人物ではなく信用できる人物でもあるようだ。
安楽椅子探偵ミス・マープル
安楽椅子探偵
現場に赴くなどして自ら能動的に情報を収集することはせずに、室内にいたままで、来訪者や新聞記事などから与えられた情報のみを頼りに事件を推理する探偵。
私がミス・マープルをかなりのご高齢だとイメージしていた理由が、ドラマの役者さんのイメージが強かったことと安楽椅子探偵という言葉のせいだと思う。
いや、安楽椅子に座っているから安楽椅子探偵と呼ぶわけではないことは知ってる。
でも英国・老婦人探偵・推理スタイルが安楽椅子探偵と聞くと「お婆ちゃんが安楽椅子で編み物しながら推理していく」と想像してしまう不思議。
安楽椅子探偵なので『牧師館の殺人』ではミス・マープルが自ら事件の捜査をしに現場に向かうことはない。
全てが警察や牧師から聞いた捜査状況や鋭い観察眼で人々の本質を見抜いて推理している。
牧師館で起きた殺人事件
村で嫌われていた治安判事のプロザロー大佐が牧師館で銃で撃たれて殺された。
1930年ごろの話のためDNA鑑定も防犯カメラも硝煙反応もない。指紋で個人特定は出来ても犯人は指紋を残すようなことはしていない。
警察の捜査は全ては聞き込みからの推測だ。
牧師館が現場だったからクレメント牧師は知る権利があるという判断から、牧師が取り調べや捜査に立ち会う。
彼は牧師という立場から人々の相談に乗ることで警察よりも事件についての情報を得ていた。
クレメント牧師はミス・マープルの観察力と洞察力を見抜き、事件についての情報をほとんどすべてミス・マープルに提供していく。
探偵ものであるが捜査はクレメント牧師がしているためミス・マープルの登場時間は多くない。
事件の捜査情報を牧師が全て把握出来てしまう緩い捜査に田舎特有の人付き合いの仕方と時代を感じる。
科学捜査が発達してないからこそ成り立つ安楽椅子探偵ミステリーは読みながら一緒に推理できる楽しみがある。
まとめ
ミステリーの女王アガサ・クリスティの安楽椅子探偵ミス・マープル長編初登場作品！
超有名古典ミステリーが現在までのミステリーに与えた影響は大きい。そのためか初めて読んだ古典ミステリーなのに既視感を覚えることもある。
それでいて『牧師館の殺人』に古臭さは感じない。
誰が犯人なのか真相が掴めず最後の最後まで楽しめる作品だった。
以上、アガサ・クリスティ『牧師館の殺人』たまこ の感想でした🐯
