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『五色の殺人者』千田理緒-第30回鮎川哲也賞受賞作

 


第30回鮎川哲也賞受賞作

丁寧な本格ミステリー作品。主人公の明るさと素人探偵ぶりが馴染みやすく、文章も読みやすいのでミステリー初心者や小学生にもおすすめな作品!

 

 


『五色の殺人者』

高齢者介護施設・あずき荘で働く、新米女性介護士のメイこと明治瑞希はある日、利用者の撲殺死体を発見する。逃走する犯人と思しき人物を目撃したのは五人。しかし、犯人の服の色についての証言は「赤」「緑」「白」「黒」「青」と、なぜかバラバラの五通りだった!
ありえない証言に加え、見つからない凶器の謎もあり、捜査は難航する。そんな中、メイの同僚・ハルが片思いしている青年が、最有力容疑者として浮上したことが判明。メイはハルに泣きつかれ、ミステリ好きの素人探偵として、彼の無実を証明しようと奮闘するが……。
不可能犯罪の真相は。切れ味鋭いロジックで鮮やかに明かされる!
選考委員の満場一致で決定した、第30回鮎川哲也賞受賞作。

そで より引用


千田理緒
初版 2020年10月9日
東京創元社

全246ページ

 

 

 

メイ探偵と恋心

高齢者介護施設あずき荘で利用者が殺害された。複数の人物が犯人らしき人間を目撃するが、犯人の服の色についての証言が全員バラバラだった。
職員メイは同僚ハルに泣きつかれメイ探偵として独自に捜査していく──。

介護施設職員のメイこと明治瑞希がなぜメイ探偵として事件の捜査をしていたのか。
それは同僚ハルに泣きつかれたから。
ハルが思いを寄せる人物が最有力容疑者になってしまい、それをなんとか助けたいハルの恋心だった。

警察が捜査をしているのに素人が探偵の真似事をする、その理由として「恋心」はくだらないような実際はそんなもんなんだろうなとも思える理由だ。

警察の捜査に不信感があって独自捜査をする─もしそういうなら素人探偵には限界がある。

警察からうまく情報を聞き出しつつアクティブに聞き込み捜査していく彼女たち、心配と応援の気持ちで読んでいて楽しかった。

また、事件の関係者とのメイ探偵とのちょっといい雰囲気な様子も見所である。

 

2つの謎

 

あずき荘での殺人事件の大きな謎は、バラバラの目撃証言と消えた凶器の2つだ。

犯人らしき人物が着ていた服の色について、五人の目撃者全員がバラバラの色を証言した。
漫画の名探偵コナンで似たような話があったなと思い出しつつ、現実(小説だけど)の犯罪では目撃証言よりも物的証拠の方が重要なのだと知る。目撃者が高齢者施設の利用者で、認知症によって記憶障害がある方々だったからである。

また、同じ顔触れの集まる施設で警備もそれなりにされている施設内で消えた凶器。
犯人は外に逃げた形跡はないのに何故凶器が見つからないのか?

事件現場となった高齢者施設ならではのミステリーがうまく作られていた。

 

小学生にもおすすめ

主人公メイの素人探偵ぶりが親しみやすくて良かった。
ひとつ疑問が出てもすぐにその疑問について解決し、次の疑問について考える──この流れが読者も一緒に推理しながら謎解きをすすめられる。
丁寧なロジックはミステリ慣れしている人ならすぐにトリックの謎に気づけるだろう。
それが簡単過ぎる、わかりやす過ぎるという意見も出そうではあるが、私は自分で推理できたことに大満足だった。

小学生にもおすすめできる丁寧なミステリー小説だ。

 


まとめ

親近感わく主人公メイ探偵の分かりやすい捜査と推理が読みやすくて面白い!
漫画では表現しにくい“この設定だからこそ”のおもしろトリックに感心した。
読書初心者や小学生にもおすすめできる丁寧なミステリー小説。

 

以上、千田理緒『五色の殺人者』 たまこ の感想でして🐯