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坂井希久子『江戸彩り見立て帖 色にいでにけり』感想-待望の文庫化!シリーズの序章!

 

料理がテーマのアンソロジー『注文の多い料理小説集』に収録されていた『色にいでにけり』が文庫化!

 

連作短編形式で読みやすい◎

 


江戸彩り見立て帖 色にいでにけり (文春文庫 さ 59-3)

 

 

『江戸彩り見立て帖 色にいでにけり』

 

あらすじ

 

お彩の父親は名摺師だった。しかし火事のせいで盲目になってしまい、お彩の許嫁だった卯吉も父娘から離れていった。

貧乏長屋で父親の面倒を見ながら細々と暮らしていたお彩は、ひょんなことから胡散臭い京男の右近と出会う。彼はお彩の優れた色彩感覚に価値を見い出し、色に関する仕事を依頼してくるのだった──。

新作菓子の意匠から花魁の仕掛けの図案まで、豊かな色彩溢れる江戸のカラーコーディネーターとして活躍するお彩の人情物語。

 

坂井希久子

 

2021年6月8日発行

 

文藝春秋

 

全233ページ

 

色にいでにけり

 

第一話はアンソロジー『注文の多い料理小説集』に収録されていた『色にいでにけり』そのまま。

胡散臭い右近からの依頼を断りたいお彩だが、弱味を握られ渋々引き受ける。

その依頼というのが“茶会に選ばれる上菓子”を試行錯誤中の菓子屋にアドバイスすること。

確かに和菓子は季節感ある綺麗なデザインなものが多いが、お高い上菓子とは縁のないお彩は自分に何か出来るわけがないとおよび腰だ。

 

教養ある高貴な人は色にも敏感だということに感心しつつ、〈緑色の茶を飲むのもお彩にとっては贅沢だ〉という江戸時代の庶民の感覚も面白かった。普段どんなお茶飲んでるんだろ?

 

 

あまりの旨さに、舌がはじけ飛ぶかと思った。

 

 

色と香も

 

また突然やってきた右近からお見合いの着物選びを頼まれたお彩。成功報酬なんと2両!

破格の依頼なのに断りたがるお彩を手土産の高価な金平糖で脅す右近はやはり胡散臭い。

 

現代でいうところの“カラーコーディネーター”のように大活躍し、依頼主の娘さんにピッタリの着物を選びぬく。本職の呉服屋の番台より色を見る目がある!

なぜかその才能で稼ぐことに抵抗があるお彩。あまりの頑なさにやきもきしちゃう〜。

 

元許嫁がでてきたり、お見合いの着物選びだったり、恋愛についての話。

 

好いた相手と必ず一緒になれるなら、心中物は流行らない。誰もが叶わなかった恋を胸の内に秘めているからこそ、若い男女の道行きは美しく胸に迫ってくるのだ。

 

 

 

青楼の春

 

3月の桜の咲く頃、右近から花見に誘われ訪れたのは吉原大門。

丁子屋のお職・花里と出会い、お彩は持ち前のセンスでまた少しだけ活躍する。

初めての吉原を祭り気分で楽しんでいたのものの、遊女たちの抱える闇も垣間見てしまう。

おきゃんなお彩だが情が深く繊細な部分がみえた。

酒に溺れて娘に迷惑かける辰五郎の内心も知れることができた。

 

家族の愛情についてほろりとくる話。

 

 

 

黒闇闇の内

夏になり、いままでのお彩の活躍が知られてきつつあった。

色についての悔しい思いをするが、色の奥深さを学びたいと決意を新たにする。

辰五郎も自立してきたのは良かったが、自分が辰五郎を甘やかして駄目にしていたのかもと悩むお彩が可哀想であった。身内に甘えていたのは辰五郎でありお彩はよく頑張ったよと褒めてあげたい。

 

右近29歳とちょっと素性が明らかに?

お彩(24歳)と同い年くらいだと思ってた。この時代の29歳はかなり大人なはず。

若くてふらふらしてる道楽息子なイメージだったわ。

 

 

紅嫌い

 

ついに右近が本格的にお彩を勧誘してきた!

 

右近の店から高給でのお誘い。お彩は火事で失った作業場の再建を願っているためお金はほしい。

私としては江戸版カラーコーディネーターとして新たな色との関わり方で活躍してほしい。

だって、お彩自身は摺れない、辰五郎は盲目に、弟子たちはそれぞれの道へ──、摺師不在な状況なのに立て直す意味とは??

意固地になってるだけな気もするが今後どうなるか期待。 

 

ここから物語が始まる感じがしたお話。

 

 

まとめ

 

待望の文庫化!

アンソロジー『注文の多い料理小説集』で『色にいでにけり』は特にお気に入りの作品だったので文庫化して続きが読めて嬉しい。

 

連作短編形式で読みやすい◎

 

江戸っ子だからとはいえお彩の気が強すぎるため、主人公は万人受けはしないタイプかもしれない。

この1冊が序章のような内容。シリーズ続きそうで楽しみ!

 

 

以上、坂井希久子『江戸彩り見立て帖 色にいでにけり』 たまこの感想でした😸